◎『太鼓の空間』馬場あき子歌集 2008年12月刊
馬場あき子さんの最新歌集。さすがの二十二冊目になる。05〜07年2月までの集成。初出一覧をみると短歌雑誌や新聞や通信誌などと多岐にわたっている。
「冬の都市沈黙の澱(おり)のごとき霞に沈みて悪霊のごと嘔吐するあり」「台風は石榴のみのり落としたりつくづくとその酸を嗅ぐ猫」この二首がこの歌集の入口と出口の歌。「悪霊のごと嘔吐する」「その酸を嗅ぐ猫」ともに結句が馬場さんらしいと思うのだがどうだろうか。「つくづく」猫が嗅ぐさまはなにか臭ってきて可愛い、見たことのある光景。「さまざまな駅の時間の中にある昼のカレーのほのかなあはれ」これも「ほのかなあはれ」が好き。「心乱るる」というのもある、「一夜花咲くを見てをりゆるやかに咲ききりたれば心乱るる」
「一つのことからいろいろのことを思い出し、広げていく方法が、ようやく齢を重ねてきた私にとっては似合わしいように思われるようになりました」とあとがきにある。表題の「太鼓の空間」から一首、「大太鼓一つし打てば一つ跳び五月の寺にゐる青蛙」妙があって、音が聞こえ、色が見え、一寸可笑しくなんとも好き。
●四六判ハードカバー装、232頁。表紙布クロスはシルキーピンク色、図案は艶けし銀箔押し。カバーのタイトルは墨箔押し。見返しと扉はキュリアスメタルホワイト。このカバーのミソはやはり三本の曲線の浮き箔だろう。マーメイド紙に箔はやはり厳しかった、現場はともかく課題は残った。バックのピンクは最初はただのグラデーションだったが、最終的には少し緑の入った淡い桃空の映像を4色で分解した。本文は勿論、いま一番新しい!活版刷り。
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