◎石田比呂志歌集『流塵集』
子どもの頃、清く正しく美しくなんて言われて、そんなものかなと思っていた。長じてそんなことはあり得ないと思うようになるのが普通。この世はひどく汚らしい奴らも多いから、こっちも染まっていくのも普通。なかには恩知らずや恥知らずも、エゴイストもいるだろう。ホントはご免こうむりたいのだが...やんぬるかな、と思うのも普通なのだろう、しかし....
ちょっと昔に肥後熊本の歌人、石田比呂志さんから「伊佐美」という芋焼酎を送ってもらったことがある。「ちびちび呑るといい」ということだった。そもそも京都での呑み会での約束だった。酔会での約束はたいてい破られるものである。アルコホルと同じく悪げなく霧散していくもの、だが石田さんは送ってくれた。麗しき伊佐美に口をつけながら、石田比呂志歌集を読む。十冊目になる『忘八(ぼうはち)』だ。タイトルについて依頼のおりに「きみそのものだなあ」と編集者は笑い、いやあ「あなたそのものだろう」とぼくも笑った。それにしても渋い...。
なんて渋い装幀だろう。自分でいうのも何だが、ちょっと渋すぎるかも知れない。
「いろいろ反省しています、勘弁してください」畢竟、石田さんにとって忘八の意味はそんなところであろうと思われる。だが石田さんは仁義をまもる。ひょっとして礼も信も、ことによると、智や悌も備わっているかもしれないなと思う。う〜んわからないがとにかく伊佐美は旨かった、これだけはたしかだ。石田さんありがとう。これで最後だなどと言わないで、どうかご自愛ください。そしてまた女人の話でもしながら愉しく呑みましょう。
●石田さんの本の装幀は写真のようにたくさんやらせてもらった。(これでも一部)A判のものもあれば四六判もある。『忘八』はグラシン巻き。各々ぼくの版画や水彩を使ったり、文字だけでやったりしたものだ。現在『流塵集』というのを装幀アップしたところである。極力単純にミニマムなイメージでつくりたいと思う。石田さんの場合いつもそうだが、装幀に取りかかる気分は浮き浮き気分だ。なぜか楽しい、大歌人なのになぜかしらん..。石田さんの本は書架でなく、こんなふうに取り出して仕事場に積み上げて見るほうが似合っていると思う。
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